
 
これまで14回にわたって裁判員制度について紹介をしてきましたが、最後にもう一度、刑事裁判に市民が裁判員として参加することの意義を考えてみたいと思います。
 
罪を犯したと疑われている人が刑事裁判で有罪となれば、刑罰が科されます。刑罰を科すこと(刑罰権の行使)は、人の命を奪うことさえある国家権力の行使です。この刑罰権が適切に行使されるためには、刑事裁判において適正な審理が行われることが不可欠です。市民が主権者として適正な審理が行われる環境を作っていくことは、極めて重要なことです。
 
裁判員法1条は、裁判員制度の意義を「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資すること」と規定していますが、裁判員となる市民の立場からすると、裁判員が単なるお飾りとなることなく、主体性を持って刑事裁判に参加することができて初めて、裁判員制度を行う意義があるといえます。多くの人にとって、裁判員裁判の対象となるような事件は縁遠いものだと思いますが、私たちが暮らす社会で現実に起こっている問題です。市民が主体性を持って刑事裁判に参加するためには、まずは、刑事裁判を他人事ではなく、自分たちの問題として受け止めることが必要です。そして、裁判員制度の現状を知り、その意義を考え、議論を深めること、そして裁判員経験を広く社会で共有していくことも必要です。市民による市民のための司法を実現していくことにこそ、刑事裁判に市民が参加する意義があると考えています。
 
 
筆者:福田 隆行(ふくだ たかゆき)
弁護士
第二東京弁護士会
 
堀法律事務所
東京都港区虎ノ門1-1-23 虎ノ門東宝ビル6F
TEL:03-6206-1022
WEB:https://fukuda-law.com/
タグ: MYTOWN SHINYURI 虎ノ門
            










