暮らしのコラム 住まい
 
日本の住宅も今では開き戸(ドア)が主流です。ドアは閉めると空間の独立性が増し、何となく個人の領域が確立したように思えます。玄関ドアは、日本では外開きが普通ですが、欧米では内開きです。客をウエルカムと迎えるときに外開きでは、相手をノックアウトすることになり、失礼極まりないわけです。また、履物の脱ぎ履きの問題があります。彼らは履物を脱がないので玄関にスペースを必要としませんが、我々は違います。結果、空間確保のため外開きになるのです。そんなわけで、日本の玄関ドアカタログには「ウエルカムドア」は載っていません。
 
引戸は音漏れや戸締り感から開き戸に比べるとルーズですが、日本人にとってはごく自然な装置だと思っています。元来、室内では障子や襖、7.5ミリほどの鏡板を張った框戸(かまちど)を用いていました。精神的に空間を間仕切るだけと言えます。今の引き戸はフラッシュ戸で、骨組みの上に3㎜ほどの合板を両面に貼った構造で強度もあります。一度、ドアを蹴ったのですが壊れませんでした(真似しないで)。
 
ドアは開閉時にスペースを必要としますが、引戸は不要。ただし、引き込むスペースが必要でプランに影響が出ることがあります。戸袋をつけると細工が複雑になるなど、大工仕事的には引戸は技量を要します。しかし、開け閉めは便利で、手が塞がっていても足が代わりをしてくれます(人目に注意!)。
 
近頃はオープンな間取りが増えて、空間を開放できる引戸復活の兆しです。ちなみに当社は、もとより引戸派です。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 会長
一級建築士
 
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