小田急永山駅から「聖蹟桜ヶ丘駅」行きバスに乗り「桜ヶ丘公園西口」で降りるか、または聖蹟桜ヶ丘駅から「永山駅」行きバスに乗り「記念館前」で降りたところに都立桜ヶ丘公園がある。多摩丘陵の尾根から谷戸にかけて、約33万9322平方メートルもの面積(2014年時点)を持つこの公園は、1950年に「都立多摩丘陵」として自然公園指定され、1984年に「都立桜ヶ丘公園」として開園した。
その名の通り桜の木も多いが、公園はもう一つの特徴として、雑木林の保全を中心に整備されてきたという。園内は主に3つの雑木林の丘で構成されており、「谷戸の丘」「こならの丘」などの名前が付けられているが、その中でも一番、標高の高い「大松山」の頂上に「旧多摩聖蹟記念館」がある。案内板によれば、同記念館は、明治天皇が明治10年代に、連光寺の丘や多摩川に兎狩りや鮎漁のために4回ほど訪れた偉業を讃えるため、元宮内大臣、田中光顕らを中心に建設計画され、1930年に完成したものであるという。建物を設計した関根要太郎は、20世紀にヨーロッパで起きた建築革新運動に興味を持った建築家で、そうしたデザインの影響を受け、多摩地域の数少ない近代洋風建築の中でも、完成度の高い優れたものとなっている。
ところで「聖蹟」とは、明治天皇が行幸した場所のことで、当コラムでも昨年の初めに甲州道中の「与瀬宿」の聖蹟碑を紹介したことがある。桜ヶ丘公園の記念館口を入ると、まず右手に多摩の町並みと中空に山の稜線が見渡せて、胸のすくような気分になるが、その先の緑地に「明治天皇御立所跡の碑」がある。碑の前に立ち、自然の音に耳を傾けていると、春夏秋冬、草木や鳥や昆虫がさまざまな表情を見せるこの公園は、きっと140年前とさほど変わってはいないのだろうなと思う。
園内は、記念館口と公園西口を結ぶメインストリートを中心に、雑木林の中を遊歩道が縦横無尽に巡らされているが、記念館から北東の方向に山道を下っていくと、広い芝生広場やキャンプ練習場も併設されている大谷戸公園。谷戸の丘を南の方向に行くと、多摩市のテニスコートがある連光寺公園。そして北側の丘上にある「遊びの広場」を経て記念館通りを渡るとドッグランや、多摩川の向こうに秩父から奥多摩の山々を見渡すことのできる「ゆうひの丘」に至る。
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