2009年5月21日に裁判員制度が始まってから2025年2月末までの間、裁判員候補者名簿に記載された人は4,216,306人にのぼります。このうち、97,444人が裁判員、33,129人が補充裁判員として選任され、実際に刑事裁判に参加しています。このように、制度が始まってから16年が経過し、130,000人以上の人が実際に刑事裁判に参加しているにもかかわらず、裁判員経験者の話を聞いたことがある人は多くないのではないでしょうか。
市民が主体性を持って刑事裁判に参加するためには、裁判員の経験が広く社会で共有されることが必要です。しかし、経験を伝えるべき立場にある裁判員には、裁判員を務めている間はもちろん、職務を終えた後にも守秘義務が課されるため、その経験を自由に話すことができません。公開の法廷で見聞きしたことや裁判に参加した感想は話すことができますが、守秘義務違反を恐れて何も話すことができない人が多くいます。また、経験の共有を受けるべき立場にある裁判員候補者は、自分が裁判員候補者であることを公にできません(公表禁止規定)。
守秘義務は、裁判員の自由な討論を保障し、事件関係者のプライバシーを保護するため、公表禁止規定は、裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を保護するための規定で、いずれも重要な意義を有します。他方で、裁判員制度をより良い制度にしていくために、裁判員経験を広く社会で共有することも重要です。そのため、これらの規定は残しつつも、その対象を緩和していくことが必要だと考えています。
筆者:福田 隆行(ふくだ たかゆき)
弁護士
第二東京弁護士会
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