暮らしのコラム 法律
 
日本の刑事裁判では、一つの事件について原則として3回まで審理を受けることができる三審制が採用されています。第一審である地方裁判所でなされた判決に不服がある当事者は、高等裁判所に不服申立て(控訴)をすることができます。また、控訴審である高等裁判所でなされた判決に不服がある当事者は、最高裁判所に不服申立て(上告)をすることができます。控訴は、第一審判決に法令違反、事実誤認、量刑不当などがあった場合にすることができますが、上告は、控訴審判決に憲法違反、憲法解釈の誤り、判例違反などがあった場合に限ってすることができます。
 
裁判員裁判は、刑事裁判の第一審手続についてのみ行われます。裁判員裁判で言い渡された判決に控訴がされた場合、控訴審の審理は職業裁判官のみで行われ、裁判員が関与することはありません。そのため、裁判員が参加してなされた事実認定や量刑判断を、職業裁判官のみで覆すことが可能な仕組みとなっています。控訴審の審理を職業裁判官のみで行うことは、裁判員制度を導入した趣旨を没却する恐れがあるのではないかとの指摘もなされているところです。
 
高等裁判所が破棄差戻判決(第一審のやり直しを求める判決。事件を第一審に戻してもう一度審理を行うことになります)をした場合、再び地方裁判所で裁判員裁判を行うことになります。この場合、従前の審理に加わった裁判員を再度選任するのではなく、新たな裁判員を選任して審理をやり直すことになります。
 
 
筆者:福田 隆行(ふくだ たかゆき)
弁護士
第二東京弁護士会
 
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