暮らしのコラム 法律
 
数人の相続人がいる場合に、ある相続人だけが、被相続人から自宅を買うための資金援助を受けていたとします。相続が発生した際に、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けることになれば、不公平な結果が生じます。このように、相続人が受けた特別な利益を「特別受益」といいます。民法は、特別受益を得た相続人は、相続分の前払いを受けていたと考え、具体的な相続分を計算する際に、特別受益の額を相続財産に加えて相続分を計算することにしています。
 
例えば、被相続人Xの相続人には長男Aと長女Bがおり、Xの相続財産は6,000万円、XはAにだけ自宅購入資金として2,000万円を援助していたとします。A、Bの法定相続分は各1/2ですが、相続財産を3,000万円ずつ分けるとすると、Bにとって不公平な結果となります。そこで、Aが援助を受けた2,000万円(特別受益の額)を相続財産6,000万円に加えた8,000万円を相続財産とみなして、Bは8,000万円の1/2である4,000万円を、Aは8,000万円の1/2である4,000万円から特別受益の額2,000万円を引いた2,000万円を取得することとされます。
 
なお、被相続人が、特別受益の額を相続財産に加えなくてよいとの意思表示をしていた場合には、このような計算をする必要はありません。また、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、他方に対して居住用不動産を贈与したときは、この意思表示をしたものと推定されます(※2019年7月1日以降の贈与に限ります)。
 
 
筆者:福田 隆行(ふくだ たかゆき)
弁護士
第二東京弁護士会
 
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