暮らしのコラム 住まい
 
日本に長年生活する英国人と、かつて最も過酷に感じた気温に関する経験の話をしました。半世紀前ですが、私は中東では涼しい季節といわれる2月にアスワンからカイロまで船旅をしました。エアコンの稼働にもかかわらず、夜間の船室で最低室温が体温を下回ることがありませんでした。船員の話では、この数日は最高45度ぐらいで涼しいと。多くの神殿・墳墓の見学は素晴らしい体験でしたが、体温を超える環境とぎらつく太陽、変化のない砂漠の風景はきつかった…。彼も同じような体験をアフリカでしていました。カラッと湿度が低かったため、さほどの抵抗感はなかったそうです。それよりも、梅雨時の日本の蒸し暑さが不快を超えて耐え難いと強調していました。英国もよく雨が降りますが蒸し暑さはありません。
 
さて、家づくりには植栽が大事です。3年ほどで樹形がしっかりしてきます。10年で幹も太くなり枝葉が広がり、さらに5年も経てば人間でいう元服です。見違えるほど成長します。その頃になると、夏の強い日差しを遮る木陰を提供してくれます。自然を自然の力で制御するパッシブデザインです。とはいえ、東京の夏の蒸し暑さは英国人ならずとも厳しいものがあります。
 
気密・断熱性能を高めた温度むらのない環境は、人だけでなく建物の健康にも大事です。温度変化が激しい家は、相対湿度の変動で結露の危険性が増します。気密の悪い家は内外の湿度に大きな差はありません。室温を下げると相対湿度が上昇し結露を招きます。温度むらのない、冬暖かく、夏涼しい家が快適な暮らしを支えます。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 会長
一級建築士
 
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