暮らしのコラム 住まい
 
長い花見を満喫できた春が過ぎ、日に日に緑濃くなる樹々の映える家並みを見ながらの散歩が爽快な季節になりました。家の周りの空き地に建売やハウスメーカーの住宅が建ち始めて、新たな街並みが形作られてきました。しかし出来上がった家を見て、何か不自然さと違和感を感じます。初めからカーテンを閉め、シャッターを閉じた「シャッター街」になっているのです。第2のリビング・庭・緑を設計していないのです。緑の植栽、木塀などで適度に視線を遮れば、家と庭の繫がりで部屋からの広がりを楽しむことができます。さらに、深緑で落ち着きや一体感のある街並みが形成でき、地域の資産価値向上にも役立つはずです。
青々とした均一の芝生に覆われ、1~2本の植栽だけの家。この緑が人工芝でした。また、一面コンクリートの庭もあります。庭のスペースが確保された家を手に入れたのに残念です。設計・施工者は、施主の希望にそって大きな家をつくることばかりで、その後の自然と楽しむ暮らしを全く提案していないのではないでしょうか。
心地よい家庭は、家と庭づくりが一体化された場からスタートするものと思います。角を曲がると塀や緑の中に見え隠れする我が家は魅力的であり、心も弾みます。丸見えでは、落ち着きませんし気恥ずかしさを感じませんか。住宅は、街並みを形成している建築物で最も数多い公共建造物なのです。住む街の風景を豊かにする緑の植栽や塀の助けを借り、暮らしの豊かさを演出してみてはいかがでしょう。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士
 
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