暮らしのコラム 住まい
 
シャッター商店街は語られて久しく、地方ではひどくなっている傾向が見受けられます。散歩をしている身近な住宅地にも空き家が増え、街並みの風景の悪化が進行しています。総務省の「住宅・土地統計調査」の2013年度版によると、全国には総数820万戸の空き家が存在するそうです。
ひとくくりに「空き家」といっても、実態は倒壊の恐れのある空き家や雑草が繁茂した空き家、まだ使用できたり、共同住宅だったりと多様です。そして、管理状態の悪い空き家は犯罪、火災発生の危険性が増し、ゴミの不法投棄などが原因の悪臭や害虫の発生により環境が損なわれ、景観の劣化は地域の資産価値を低下させます。
空き家となった理由で最も多いのは「相続」で、しかも建築時期が昭和55年以前の割合が多数を占めています。税制や改修に掛かる多額の費用の問題で、今後の活用意向は「そのままにしておく」が、約半数に上るそうです。しかし、半数は活用を考えていることになります。
町田市金井の住宅街に、豊かな自然環境に囲まれた古民家を再利用したクラフト工房LaMano(ラ・まの)があります。障がいのある人たちがクラフトやアート作品を通したモノづくりをしていて、年間延べ1,000人のボランティアに支えられながら、ご近所さんや地域の中学校とワークショップを通した交流も行っています。土地や建物の不動産が持つ個性を活かした成功例です。市場から見放された「空き家」でも、その地域ならではの「個別性」を読み解き「付加価値」を創造することが再活用を促すと考えています。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士
 
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