暮らしのコラム 住まい
 
岩手県北部の町、二戸へ出掛けました。やはり東北の冬は厳しく、雪がまだ多く残っていました。今回は、この春、二戸の県立職業訓練校の木工課を卒業する大工志望の生徒15人と指導教官にお会いし、皆の情熱とやる気が伝わってくる卒業制作の様子を拝見しました。春はすぐそこまで来ています。
総務省の労働力調査(2016年平均)によると、現場の技能労働者は約80万人が60歳以上で、30歳未満は37万人にすぎないそうです。また、SAREXの全国区でのシミュレーションでは、高齢化で大工の数は2015年に308,758人、2020年には211,518人になり、2010年の397,400人の53%、つまりほぼ半分になると予測されています。また、大工の新規就業者は、2020年まで毎年15~24歳が2,000人との予想です。住宅の新築着工数も少子高齢化で減少傾向にありますが、大工の人手不足の深刻さはそれ以上です。
西方棟梁の言葉に「溝を作ってやる…」というくだりがありますが、それは、若手が進むべき溝を掘ってやることで、水が自然と溝を流れていくように、若手が問題に遭遇しても乗り越えていくことができるという意味です。最近は部材の多くが部品化されましたが、建物の完成レベルは大工の腕によります。手仕事を大切にする弊社は、技量レベルを大事にしています。5年前に入社した若手は既に棟梁になり、そして昨年、今年と一人ずつ入社が続きます。互いに切磋琢磨する場を創って、魅力ある仕事であることを発信していきたいと思います。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士
 
株式会社 鈴木工務店
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TEL:042-735-5771
URL:http://suzuki-koumuten.co.jp/