
1970年代に宅地分譲が始まった低層(二階建て)の住宅地では、近年空き家が目立つようになりました。数軒がまとまって空き家となり、庇やバルコニーの腐食が進み、庭木は手入れされずに伸び放題。景観や防犯、防災の面でも問題が生じ、近隣の住民は雑草や害虫の発生など、さまざまな不便を感じているようです。
現在、築40年の長年住み慣れた家の大規模改修を進めています。構造躯体は基本いじらず、間仕切りを撤去して広い空間をつくり、金物による接合部補強や耐力壁の追加で強度を確保しました。これから何十年も住むのですから、「冬暖かく、夏涼しい家」はあたりまえ。外壁全体を断熱材で包み込み、気密シートで丁寧に覆っています。既存建物をくるむ作業は手間がかかりますが、性能向上には欠かせません。さらに、全ての窓を樹脂サッシに交換し、断熱等級6以上を実現しました。家に刻まれた生活の記録はそのまま残し、時間の層を受け継ぐ住まいとしています。
先月、石巻の郊外で新築された60代セミリタイア夫婦の家を訪ねました。相続を機に土地を手放す例が多い地域で、「この土地で生き続けたい」との強い思いが形になった家でした。母屋や蔵などを解体し、井戸小屋のみを残して建てた平屋は、屋根下の半分以上を土間や軒下の半外部空間としたワンルーム構成。風が通り抜け、自然と調和した居心地の良い素晴らしい住まいでした。建物が思いに応え、次世代へと継がれる家こそ、地域が再び息を吹き返す礎になると感じました。
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 会長
一級建築士
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