観音寺に祀られた恵比寿天
古来、人々が氏神様として祀ってきたのは、農村の護国豊穣を願う対象であった。ところが室町時代の終わり頃になると、自ら財力を築いた商人たちが、個人の願いを叶える「福の神」をお祀りするようになった。これが七福神の起こりで、仏教の経典の「七難即滅、七福即生」に因んで集められた恵比寿天、大黒天、毘沙門天、弁財天、布袋尊、福禄寿、寿老人の七人の神様に、商売繁盛や大願成就、健康長寿などの願い事をするようになったのである。今日のような「七福神詣り」が行われるようになったのは江戸時代からと言われるが、今年のお正月は麻生区周辺にある「武州稲毛七福神」を自転車で参詣してみることにした。
最初に訪れたのは千代ヶ丘7丁目のバス停を降り、案内板脇の小道を入って至る香林寺。雲一つない青空にそそり立つ五重塔が今日も美しい。三十三観音が並ぶ小道を下ると本堂があり、その脇に祀られた「布袋尊」に手を合わせる。そこから細山交番の通りに降りて西に進み、白井建設の看板を左に入ると潮音寺。民家のような入り口の奥にこじんまりとした本堂があり、その脇に「福禄寿」が祀られていた。
津久井街道を小田急線に沿って東へ進む。生田陸橋の交差点を左に上がり、1本目の道を右へ入ると観音寺。ここに祀られた「恵比寿天」は七人のうち唯一、日本出身の神様で、特に商売繁昌のご利益がある。お参りを済ませると甘酒やお菓子を勧められたので、ありがたくひと休みさせていただく
生田陸橋交差点から津久井道を渡って南生田の方に進むこと約20分。長沢浄水場の正門前を鋭角に右折すると盛源寺の裏手に出る。急な石段を下ると広い境内に「弁財天」と「寿老人」を祀るお堂があった。
長沢浄水場の南側に沿う道から専修大入口を右折。生田緑地との間を降りていくと小田急線の踏切手前に「大黒天」が祀られた広福寺がある。ここは鎌倉時代に当地を治めた稲毛三郎重成の居館跡でもある。五反田川沿いに川崎街道まで出て、稲生橋交差点の先を右へ上ると、最後の安立寺。「毘沙門天」をお参りし、家を出てから約4時間の七福神巡りは終了した。丘陵地に点在する七福神をめぐるこのコースは、見晴らしの良い丘の上や木々の香り漂う雑木林を往くとても気持ちの良い道のり。お正月に限らず、休日に歩いてみるのもお勧めだ。
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