裁判員裁判の対象となる事件には、強盗致死傷罪や殺人罪、傷害致死罪など、被害者が傷つけられたり、殺害されたりした事件が大きな割合を占めています。そのため、多くの裁判員が、被害者の傷や遺体の写真を見たり、詳しい説明を聞いたりする必要に迫られます。こうした証拠を見聞きすることにより受ける精神的負担は決して小さいものではありません。 2013年5月には、裁判員経験者が、証拠調べで殺害現場や遺体のカラー写真を見たことが原因で急性ストレス障害を発症したとして、国家賠償請求訴訟を提起した事件もありました。
裁判所は、遺体写真等の刺激の強い証拠については、その証拠が真に必要不可欠なものか、その証拠を取り調べることが裁判員に過度の精神的負担を与え、適正な判断ができなくなることがないかを慎重に検討し、場合によっては写真に替えてイラストを採用するなどの代替手段を取る配慮をしています。
証拠の提出の仕方を工夫したり代替手段を取ったりするなどの配慮がなければ安心して裁判員を務められないという意見がある一方で、人を裁く以上、判断のために必要であれば遺体写真を含めた証拠を直視しなければならないという意見もあります。2023年以降、18歳・19歳の人も裁判員に選任されるようになった関係で、心の発達段階に応じた配慮が必要だとの意見も出ているところであり、適切な証拠調べの実施と裁判員の心理的負担の軽減を両立させることが求められています。
筆者:福田 隆行(ふくだ たかゆき)
弁護士
第二東京弁護士会
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