暮らしのコラム 住まい
 
琵琶湖東岸への旅に出かけました。大老・井伊直弼の居城「彦根城」と「埋木舎」を見学後、湖を右手に京都へ向かうと近江八幡の町が現れます。天秤棒を担ぎ「売り手よし、買い手よし、世間よし」で有名な近江商人の住居と街並みを五個荘(ごかしょう)に訪ね、そして、旅の一番の目的であるウィリアム・ヴォーリスの建築を市内で見学。最後に、菓子「たねや」の旗艦店で、藤森照信氏設計の「ラ・コリーナ近江八幡」を訪れました。
さて、ヴォーリスについて。彼は1905年に英語教師として来日し、教会建築の設計を機に日本で数多くの西洋建築を手掛け、その数は1,600にもなるそうです。その1つ、市による建替え提案で揉めた豊郷小学校旧校舎群を訪れました。白の四角い、モダンで端正な校舎は、子どもたちにとって高揚感のある学びの場となったでしょう。1階の階段手すりに兎と亀が仲良く並び、途中は兎の居眠り、その上階には亀が。ついつい最上階の3階まで上がってしまいました。
次に、「ラ・コリーナ」です。木造2階建ての店舗外装は草で覆われ、内部は一転して白い洞窟の中にいるような空間が特徴的でした。建物を抜けると、石や草、田んぼで構成された広場が目の前に開けます。テーマパークとは違う、自然と一体化した豊かな場を味わうことができました。近江商人の「三方よし」の精神が、「人によし、自然によし、素材によし」と、今に生きていました。
本年も現代の「三方よし」の精神で精進し、暮らしのヒントとなるコラムをお届けします。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士
 
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