暮らしのコラム 住まい

冬の朝、日差しは思いのほか部屋の奥まで差し込みます。その光を浴びると、まだ動きの鈍い寝起きの身体が、すっと目を覚ますような気がします。

先日の朝、床に落ちた光がやけにきれいで、思わず足を止めました。毎日踏みしめている床なのに、なぜだろうと不思議に思ったのです。

わが家の床は無垢材です。手入れが大変そうだと言われることがありますが、実際はどうでしょうか。妻は日頃から、汚れや埃が気になるとクイックルワイパーをかけています。さっと一拭きする程度です。そういえば、新築の時に自然素材のワックスを一度塗ったきりで、その後は特別な手入れはしていません。それでも床は年を重ねるごとに落ち着いた表情を見せています。

光に照らされた床を見て、ふと気付きました。妻が「埃を取るため」と続けてきた日々の掃除が、床を守り、育てていたのではないか。目に見えないほどの油分や、手の動きの積み重ねが、艶となって現れたのではと。これまで、光が差し込む瞬間に気を留めていなかったのかもしれません。気持ちの良い床だとは感じていましたが、目に見える形で応えてくれると、少しうれしくなります。

家の中で起こる変化は、たいてい静かで、ささやかなものです。埃をためないこと、気が付いた時に一手間かけること。その繰り返しが、住まいを心地よく保っています。寺社の年末恒例の「すす払い」も、「建物を長持ちさせる秘訣だよ」と職人から教わったことがありました。

それにしても、朝日に映える床は、実に快いものだと感じた一日でした。

筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 会長
一級建築士

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