アンケート調査で見えてきた王禅寺エリアの課題や可能性
早稲田大学都市・地域研究所と三井不動産株式会社は、産学連携プロジェクトとして「王禅寺プロジェクト」を立ち上げ、麻生区王禅寺エリアの5町会(三井山百合会、三井山百合第二地区自治会、三井山百合第三地区自治会、新百合ヶ丘自治会、新百合ヶ丘第五住宅自治会)をフィールドとして活動を開始しました。同プロジェクトは王禅寺エリアの住民や行政組織などとも連携し、まちびらきから半世紀が経過した郊外型住宅地の将来像を共に考え、実践する場となります。キーワードは「経年優化」。今後の社会変化に対応する、より優良な住環境をつくるためのアイデアや活動を提案していきます。
今年3月、まずは王禅寺エリアの現在の課題と住民が考える今後の課題を明らかにするため、アンケート調査を実施しました。上記5町会を対象に3,093枚のアンケートを配布し、そのうち有効回答として回収できたものが768枚。80歳以上の高齢者で男性の回答者が最も多く(15.51%)、自分の住環境への関心の高さがうかがえます。一方、若年層の回答者は少なく(20歳代:1.05%、30歳代:4.20%)、今後の活動を行う上では若年層の積極的参加を促す仕組みが必要となりそうです。
アンケートは「回答者属性」「ライフスタイルや近所付き合い」「外出や健康」「住まいと王禅寺地区」に関する、計32問の質問で構成されています(質問項目と回答結果の詳細は、同プロジェクト公式WEBサイトの「研究成果」ページ参照)。アンケートの回答を分析することにより下記のような、現在住民に認識されている課題や可能性が見えてきたといいます。
《アンケートから見えてきた現在認識されている課題・可能性(麻生区王禅寺エリアアンケート報告会資料より)》
1.近所の居場所
・近隣の住宅地内に居場所がない→単一用途の住宅地の課題、近隣の小さな居場所づくり
2.交通・移動利便性
・高齢者の移動困難→過度に車での移動に依存しない近隣デザイン
3.多世代共生、次世代の暮らし
・希薄な近所付き合い→バーチャルな交流空間
・高齢者の孤独感(30代の孤立予備軍も)
・若い世代への高い期待→世代間コミュニケーションの必要性
4.良好な住環境、住民自治
・公園や緑地を含む豊かな自然を評価、環境への意識→循環型社会への転換可能性
・自治活動の持続困難(担い手不足)→次世代プレーヤー育成
上記の課題・可能性には、1960~70年代の近隣計画と現在の住まい方のミスマッチや、少子・高齢化による自治活動の担い手不足が通底していると、同プロジェクトチームは分析します。今後、どのような機能を付加することで、王禅寺エリアを次世代に対しても魅力ある住宅地にすることができるのでしょうか。近隣に小さな居場所「サードプレイス」をつくる、歩行者優先の街路デザインや運用の実証を行う、次世代プレーヤーが生まれるような多世代の学び合いの場を設けるなど、さまざまな取り組み案が考えられます。同プロジェクトでは今後も実践的な研究を展開し、その成果をWEBサイトなどで公表していきます。
【お問合せ】
良質な郊外住宅地の「経年優化」王禅寺プロジェクト
URL:https://keinen-yuka-ozenji.org/
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