
デフリンピック100周年の年に、昭和音大生が届ける「共生のステージ」
障がいの垣根を越え、誰もが「聴いて、見て、踊って、感じて」、共に楽しめる空間を。手話ダンスと音楽が響き合う、「心」でつながる新しい舞台が誕生します。
今年11月、東京で「デフリンピック」が開催されます。聴覚障がいのある人のための国際的なスポーツ大会で、1924年の初開催から100周年を迎えます。そんな記念すべき年に、手話ダンスと生バンドのコラボレーション公演を、昭和音楽大学アートマネジメントコースの学生たちが企画しました。公演名は『つなぐ〜音楽と手話ダンスが心を結ぶ〜』。手話ダンスの第一人者・北村仁さん率いる「北村仁 & UD DANCERS JAPAN」と、昭和音楽大学の講師によるバンド「Showa Dream Band」が共演します。
「障がいのある方も、そうでない方も一緒に楽しめる空間を作りたいんです」。そう話すのは、昭和音楽大学アートマネジメントコース3年生の西口和花さん。『つなぐ』は、西口さんをはじめとする3年生11人が授業の一環として半年かけて制作。企画から広報、会計、当日の運営まで、学生たちが自らの手でつくり上げます。手話ダンスと生バンドのコラボレーションという初めての試みのため、教員も交えて手探りで知恵を出し合いながら準備を進めてきました。
企画の原点は「音楽は自由で縛りがないもの」という気付き
西口さんが本公演を企画したきっかけは、2年生の時に受けた「障がい児教育論」という授業でした。
「障がいのある方はコンサートに行くことが難しく、音楽に触れる機会が少ないと初めて知りました。私は幼い頃からミュージカルやコンサートで感動をもらってきたので、障がいがあるということだけで音楽に触れる機会が少ないのは悲しいし、現状を変えたいと思うようになりました」
また、別の授業で「声」というお題が出された時、西口さんは「音楽は声だけで伝えるものではない」と感じたといいます。
「音楽は声や楽器だけではない。音楽はもっと自由で縛りがないものだと思うんです」
その思いを先生に伝えたところ、紹介されたのが北村仁さんの「手話ダンス」でした。最初に動画を見た印象は、表現力が豊かなダンサー。見終わった後に、その振り付けが全て手話だったと知り、強い衝撃を受けたそうです。良い意味で手話だと気付かない、それが北村さんのダンスの魅力でした。
「当時、私は全く手話が分からなかったけど、そんな私でも楽しめました。だとしたら、手話を知らない方も一緒に楽しんでいただけるのではないかと思いました」
「障がいのある人のためのコンサート」という枠ではなく、「障がいの垣根を越えて、みんなで楽しめるコンサート」にしたい。『つなぐ』は、そんな思いから生まれました。
誰もが安心して楽しめるコンサートを目指して
公演の準備では、聴覚障がいのある人も楽しめる環境整備に力を入れています。補聴器や人工内耳を使用している人の聴こえをサポートする機械を設置した「ヒアリングループ席」を設け、川崎市聴覚障害者情報文化センターから機材の貸し出し協力を受けました。
「聴覚障がいの方は、生バンドの演奏を間近で体験する機会が少ないのではないかと思います。ヒアリングループを通して、迫力ある生演奏を感じていただきたいです」
さらに、手話通訳や筆談も用意しています。特に力を注いだのは字幕。ステージ後方にバンドを配置する都合上、スクリーンに字幕を投影することは難しいため最初はあきらめかけていたそうですが、北村さんから「使うか使わないかをお客さんが選べるように、絶対に環境は整えるべきだ」と助言をもらい、教員・学生が一丸となって方法を探しました。最終的には、舞台上部に白い板を吊り、客席後方から文字を投影する方法で字幕を実現しました。
「皆さんに楽しんでいただけるよう環境を整えているので、安心してお越しいただければと思います」
生バンドとの共演で生まれる迫力のステージ
一方で、音楽面の見どころ・聴きどころも多い本公演。手話ダンスと共演する「Showa Dream Band」は、同学のジャズコースとロックアンドポップミュージックコースの教員により構成された生バンドで、この公演のためだけに結成されました。有名アーティストのバックバンドを務めるメンバーも多く、バンドの音楽だけでも十分に楽しめるものになっています。
プログラムに選んだのは、MISIA「君の願いが世界を輝かす」、Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)「Subtitle」、B’z「イルミネーション」、緑黄色社会「Mela!」など、世代を超えて人気がある楽曲の数々。プロのバンドによる演奏と北村さんたちの手話ダンスが融合する、「見て・聴いて・感じる音楽体験」が待っています。なかでも西口さんのおすすめは、プログラム後半に披露するUPSTARTの「ミライヘ feat. 朝倉未来」という曲。
「UD DANCERS JAPANさんの中にも、聴覚障がいのある方が2人いらっしゃるんです。でも、言われないと気付かないくらい周囲と振り付けがしっかり合っていて、感動します。この曲自体が、『挫折することもあるけど、前に向かって、みんなで頑張っていこうね』という前向きなメッセージが込められていて…。苦労を経験してきた彼らが踊るからこそ、心打たれます」
また、観客参加型で届けるV6の「WAになっておどろう」では、観客も北村仁 & UD DANCERS JAPANと一緒に手話で踊ることができます。障がいの垣根をこえて同じ空間で楽しんでほしいという思いが込められた演目です。
豪華なメンバーによる公演でありながら、なるべく多くの人に気軽に来てほしいという思いから、チケット料金も手頃な価格に抑えました。会場の「スタジオ・リリエ」は後方の座席からもステージが近く感じられる、本格的な音響や照明を備えた小規模スタジオであるため、価格以上の満足感が得られそうです。
音楽と手話ダンスで心をつなぐ、学生たちの願い
「今回の公演がきっかけとなって、手話に興味を持っていただけたらうれしいです。障がいの有無で区別するのではなく、共に社会を歩んでいけたら。そんな世界になればいいなと思っています」
学生たちの真っすぐな思いでつくられたステージ。音楽と手話ダンスが心でつながる空間を、ぜひ会場で感じてください。

チラシ(PDF)ダウンロード
[INFORMATION]
昭和音楽大学音楽芸術運営学科アートマネジメントコース企画制作演習企画公演 Vol.2
「つなぐ 〜音楽と手話ダンスが心を結ぶ〜」
開催日時:2025年11月22日(土) 17:00開演(開場16:30)※公演時間は約70分を予定(休憩なし)
会場:昭和音楽大学北校舎5F スタジオ・リリエ(川崎市麻生区万福寺1-16-6、小田急線・新百合ヶ丘駅北口より徒歩1分)
出演:北村仁 & UD DANCERS JAPAN(手話ダンス)、Showa Dream Band(演奏)
演奏予定曲目:MISIA「君の願いが世界を輝かす」、Official髭男dism「Subtitle」、V6「WAになっておどろう」(手話通訳あり)、緑黄色社会「Mela!」、B’z「イルミネーション」、UPSTART「ミライヘ feat. 朝倉未来」、他
料金:一般1,500円、4歳~大学生1,000円(全席指定・税込)
※ヒアリングループ・手話通訳・車イス席の利用を希望する場合は、下記アートマネジメント企画制作室よりチケットをお買い求めください。
主催:昭和音楽大学音楽芸術運営学科アートマネジメントコース
後援:川崎市、「音楽のまち・かわさき」推進協議会、NPO法人 しんゆり・芸術のまちづくり、tvk(テレビ神奈川)
【お問合せ・お申込み】
昭和音楽大学アートマネジメントコース 企画制作室
MAIL:art-3@st.tosei-showa-music.ac.jp
TEL:044-959-5121(11:00〜17:00 ※土・日・祝日を除く)
URL:https://pont.co/u/25_tunagu_atm
タグ: MYTOWN SHINYURI 新百合ヶ丘











