裁判員裁判の対象となるのは、死刑や無期懲役に当たる罪に係る事件など一定の重大事件です。裁判所の取りまとめによると、制度開始から2023年5月末日までの間、裁判員裁判対象事件として起訴された被告人の数は合計17,836人ですが、その内訳は強盗致傷が4,108人で最も多く、殺人が3,985人、現住建造物等放火が1,758人、覚醒剤取締法違反が1,545人、傷害致死が1,500人と続いています。これらの重大事件が対象とされたのは、社会的な影響が大きく、国民の関心が高いと考えられるからです。このように、裁判員制度の対象は一定の重大事件に限られるので、刑事裁判全体に占める割合は1.4%ほどとなっています(2022年司法統計)。なお、裁判員裁判対象事件であっても、裁判員などの生命・身体・財産に危害が加えられる恐れがあるような場合は、対象事件から除外されることがあります。近年では、2019年に福岡地方裁判所が、特定危険指定暴力団幹部らが被告人となった事件について対象事件から除外する決定をしています。
裁判員裁判は全国の地方裁判所の本庁50か所と支部10か所で行われます。神奈川県では、横浜地方裁判所本庁と小田原支部で行われ、川崎支部では行われません。日本の刑事裁判では三審制が採られており、1つの事件について原則として3回まで審理を受けることができますが、裁判員裁判は第一審である地方裁判所でのみ行われます。高等裁判所で行われる控訴審、最高裁判所で行われる上告審では裁判官のみで審理されることになります。
筆者:福田 隆行(ふくだ たかゆき)
弁護士
第二東京弁護士会
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