残された貴重な田園風景に映る人々の営み
川崎市の北部最西端に位置し、周囲を稲城市・多摩市・町田市に囲まれた黒川・はるひ野エリア。近年、その大部分が川崎市の市街化調整区域及び農業振興地域に指定されたことから、周辺各地で急速に進んだ都市化からは免れ、市内では珍しく谷戸の地形を利用した農業が受け継がれて里地・里山の光景が残る地域です。
エリア内には自然環境を保存するために指定された特別緑地保全地区もたくさんあります。中でも「黒川よこみね緑地」は、古代より東国と西国を結ぶ道として人々の往来に使われてきた多摩丘陵の尾根道(現「多摩よこやまの道」)につながる遊歩道として整備され、歩けば自然の中で季節の巡りや古から続く人々の歩みが感じられます。
黒川駅開業から30年、2004年にはるひ野駅が開業
一方、1974年には小田急多摩線が開通し、五月台駅・栗平駅と並んで黒川駅が誕生。翌年、同エリアで土地区画整理方式による宅地開発が始まりました。
さらに鶴川街道や尻手黒川道路、京王相模原線などの交通網が整備され、隣接する多摩市・稲城市の多摩ニュータウン計画の影響を受けつつ、2004年12月にははるひ野駅が開業。新たな住宅地「はるひ野」が街開きしました。街の中心部には川崎市初の小中連携校として「はるひ野小中学校」が建てられ、現在は約1,500人もの子どもたちが一つの学び舎で過ごしています。
新しいまちとして、同エリアが持ついくつもの顔
そして今、黒川・はるひ野エリアは自然豊かな土地というだけではなく、いくつかの顔を併せ持っています。まず、現在の黒川を語る上で欠かすことのできないのが、マイコンシティの存在です。黒川駅北側にあるマイコンシティ南黒川地区は区画面積約3ヘクタール。1987〜88年にかけ、川崎の新時代産業を担う最先端の研究開発拠点として、主にコンピュータソフトウェア関連の企業を誘致し整備されました。また黒川駅南側にも、マイコンシティ栗木地区が造成されています。
文化・芸術の拠点としては、黒川駅北側徒歩8分ほどの所に歴史ある新劇の劇団「劇団民藝」の稽古場があり、定期的に稽古場公演などを企画し地域住民との交流も行っています。また、2018年には同駅前に読売日本交響楽団の新練習所が開設。同楽団の演奏(録音)は黒川駅構内のBGMと列車接近メロディに使用されています。
この他にも同エリアには、環境・自然・地域との共生をコンセプトとする「明治大学黒川農場」や大型の農産物直売所「セレサモス麻生店」、収穫体験などができる観光農場、さまざまなプログラムを実施する「川崎市黒川青少年野外活動センター」など、地域の農業や自然をより身近に感じられる場所が多数あります。豊かな自然と共生し、新しい暮らしが広がる黒川・はるひ野エリア。時間を見つけて歩いてみてはいかがでしょうか。