暮らしのコラム 住まい
時間をかけた家づくりも、いよいよ完成・お引き渡しの時を迎えます。この瞬間は、お客様とつくり手双方にとって最も高揚する場面ですが、同時にそれは「家守り」という新たな門出です。
 
お引き渡し後は、3カ月点検に始まり、1年・3年・5年・10年と定期点検を行います。初期の5年間は暮らしの中で使い勝手を確かめる期間であり、大きな不具合は少なく、棚の追加や収納の見直しといった調整が中心です。設計にとっては勉強の場でもあります。その後は、扉の開閉の重さや設備の経年変化が現れ、手入れや部品交換が必要になります。外部の状態は、日頃の手入れによって差が出ます。排水管の洗浄や外壁の点検を怠ると、不具合に気付くのが遅れることもあります。また、住まいの快適性、とくに空調は、住む人の感覚に応じた調整が求められ、設計段階だけでなく、暮らしの中での工夫を二人三脚で考えていきます。10年を過ぎる頃には、外壁塗装や設備更新の時期に入りますが、住まいを長持ちさせる最も大切な要素は、日々の手入れです。庭に出て家の周りを歩き、草を抜き、汚れを拭く。こうした行為こそが、最も確かな「家守り」と言えるでしょう。さらに、家の変化に気付き、手をかける時間が、住まいへの愛着を育てていきます。
 
家は完成して終わりではなく、暮らしとともに育つものです。「いい家を建ててくれてありがとう」と言っていただける瞬間は、積み重ねの中にあります。住まいは家族の時間を受け止めながら、静かに価値を深めていきます。冬暖かく、夏涼しい住まいは、丁寧な手入れとともに、その価値をさらに高めると考えています。
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 会長
一級建築士
 
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