リトルピエノ保育園新百合ヶ丘ROOMにて、園児たちに岡上産バイオマス食器を手渡す(株)カルナエスト代表の山田貢さん。
 
農・産・学・福の連携により地域内循環の仕組みづくりを目指す
 
岡上産の野菜を、岡上から生まれた自然由来の食器で。株式会社カルナエスト(麻生区岡上)の呼びかけにより、地域資源を活用し、地域で自然環境について考え支え合う、地域内循環の仕組みづくりを目指す取り組みが進められています。このプロジェクトは、川崎市の2020年度農商工等連携モデル事業にも採択されました。始まりはカルナエストの畑から。果実の成長過程で剪定する枝や、間引くために伐採する竹など、本来は処分する素材を株式会社ユニオン産業(中原区井田)の独自技術でペレット化。和光大学地域連携センター「地域応援プロジェクト」で学生がプロダクトデザインを行い、岡上産バイオマス食器の試作品が完成しました。
 
今回完成した食器は、小さな子どもが使いやすいよう、細部にまで配慮された設計。和光大学表現学部芸術学科の倉片雅行教授が監修し、学生たちが市場調査を行って3Dデータを制作しました。学生たちがマーケティング調査まで行い、商品として販売するところまで行うのは今回のプロジェクトが初めて。世の中に出ていくモノの制作に携わることができ、しかも地域の子どもたちに提供できるということで、学生たちにとって貴重な経験となっています。
 
ユニオン産業が製造したバイオマスペレットでできたこの食器は、燃やしても有毒ガスの発生が少なく、二酸化炭素(CO2)を40%以上も削減します。今回は原料として竹・禅寺丸柿の枝・ブドウの枝を使用していますが、竹を配合した樹脂については高い抗菌効果があり、食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌や、大腸菌O-157にも99.9%の抑制効果があることが証明されています。さらにカビの抑制効果もあり、カビ抵抗性試験では、カビ培養後4週間経ってもカビの発生が認められなかったそうです。衛生面においても安心できる優れた食器と言えます。禅寺丸柿とブドウの枝を配合した樹脂については、今後試験を実施していく予定とのこと。柿にはタンニンが含まれているので、おそらく何かしらの抑制効果があるのではないかと期待されています。
 
3月26日には、株式会社バンビのピエノ(麻生区上麻生)の協力のもと、リトルピエノ保育園新百合ヶ丘ROOMにてバイオマス食器を教育現場へ導入する社会実験が行われました。最初にカルナエスト代表の山田貢さんから、この食器は園児たちが農業体験で触れたことがある柿の枝や竹でできていると聞き、皆興味深々。その後、食器に盛り付けられた給食が配られましたが、園児たちは違和感を感じることなく食器を使い、おいしそうに食べていました。「安心・安全は大前提ですが、食べることに興味を持ってもらうことも大切です。この食器は食材が見えやすいので、子どもたちの視覚に訴える力を感じました。スプーンやフォークもとても使いやすそうでしたね」と、バンビのピエノ代表の石村真紀子さん。食器に少しでも違和感を感じると、子どもたちは食べることへの意欲を失ってしまいます。食べることへの意欲を育てるという意味でも、お皿や、フォークやスプーンなど食べ物を口へ運ぶモノにこだわることは大切だと話していました。
 
カルナエストの山田さんは、「地域の中で資源を循環させるまちづくりができれば。プロジェクトを通して、大人と大学生、小学生、そして保育園児がつながり、人の循環をも起こすことができます。そんな取り組みを川崎で、麻生区で、岡上で進めていきたい」と、このプロジェクトへの期待を込めて語ってくれました。
 
今回の試作品の食器に含まれる自然素材は52%ですが、生分解性のものにするための研究は最終段階まで進んでいるそうです。今年度はデザインを含め改良を重ねて、パッケージのデザインも行い、1年後には生分解性のもので商品化することを目標にしています。
 
山田さんが食器の原料の実物とイラストを見せながら説明すると、園児たちは「柿知ってるー」「すごーい」「(使った原料により)色が違うね」など、すぐに反応して興味を示していました。
 
今回できた試作品は3種。使った原料は左から、禅寺丸柿の枝、竹、ブドウの枝。素材から出た自然な色合いも魅力。
 
給食には、(株)カルナエストから提供された、岡上産ののらぼう菜やイチゴも添えられ、園児たちは食を通して農と環境のつながりを学ぶことができました。
 
おいしそうに給食を食べる園児たち。食器に違和感を感じることはなく、食が進んだようです。
 
園児たちと食器を持って記念撮影。
 
 
[INFORMATION]
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