暮らしのコラム 本
 
『もりのなか』は、見かけは地味ですが、何度でも読むたびに楽しめる、味わいの深い本です。「かみのぼうしをかぶり、あたらしいらっぱをもって」もりへ散歩に出かけた「ぼく」。おしゃれなライオン、水浴び中の2匹の子ぞう、くま、カンガルー親子、年とったこうのとり、木の上で遊ぶ2匹のさる、うさぎ、と次々に出会い、一緒に散歩して…。
本当にすてきな、もりのなか。子どもたちも本の中で一緒に遊びます。そして…迎えにきたお父さんとのやりとりが、またとってもいいのです。
 
大勢の参加者で楽しく賑わっていたある催しでのこと、人の多さにたじろぎ、参加できずにずっと見ている小さな女の子がいました。そして彼女のそばで、これまたずっと待っているお父さん。普通なら「やらないなら帰ろう」と言いそうなところです。しかし、「お父さんやってみませんか」と声をかけると戸惑いながらもやってみてくれて、催しの終わる頃にはいつの間にか、その子もやることができたのです。
満足げにゆったりと帰っていく2人の後ろ姿は、『もりのなか』みたいでした。こんなふうに、自分の見ているものを一緒に見て、そのペースや思いに合わせて付き合ってもらえたら、しあわせだな、と心が温かくなりました。
 
もりのなか
『もりのなか』
文・絵:マリー・ホール・エッツ
訳:間崎ルリ子(まさき るりこ)
出版社:福音館書店
初版年月日:1963年12月20日
ISBN:978-4-8340-0016-0
 
 
米倉さん
コラム筆者:米倉 由布子(よねくら ゆうこ)
 
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