暮らしのコラム 住まい
 
信じ難い悲劇が、パリのノートルダム大聖堂を襲いました。パリに行けば1度は訪れる建物ですし、私も屋根まで登りました。失火原因はいまだ不明ですが、工事による過失が疑われています。第二次大戦中でもフランス人研究者から「金堂研究」を発表されるほど興味を持たれていた法隆寺金堂が、1949年に出火し、国宝の12面壁画の大半を焼損した事故を思い出しました。作業員の電気座布団のスイッチの切り忘れが原因でした。
フランスでは、今回の困難を乗り越えるべく各地で祈りが奉げられています。崩壊する危険性があり、内部調査も時間がかかりそうですが、再建への寄付は国内の企業から続々と集まってきているとか。スピードと金額に驚いています。2024年オリンピック・パリ大会へ向けて修復を完了させるとのこと。そして、世界中の建築家から公募して国際コンテストを開催し「ビィオレ・ル・デユクが19世紀に設計した尖塔を再建するか、新しい尖塔を建設するか」を決着させると発表。かつても、パリ万博時に建設され大議論を巻き起こしたエッフェルタワー、1977年開館の構造躯体や設備が剥き出しのポンピドー・センターもパリの美観を損ねると批判が巻き起こりましたが、今ではパリの名所になっています。
日本では、原因究明というより粗探しに躍起となるマスコミ然り、政治家も国民も含めて進むべき方向を見失い、新しい何かを実現する気力を失っているように見えます。ピンチをチャンスに変えるフランスを見て、「令和」は創造的変化を起こす行動の時代にしたいものです。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士
 
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