コラムタイトル
 
過日、ほんの森にて行われた松岡享子さんの講演を聴いて、「見えないものを見る目」という言葉に、ある記憶がよみがえりました。10年程前のある晩、洗濯機のスイッチを入れホッとしたとき、まとわりつく幼い息子に「むかし、おばあさんが川に洗濯に行ったら、川上から大きな桃が、ドンブラコッコスッコッコって流れてきたんだって」と語りかけたことがありました。すると息子の顔がパアッと輝き、「続きのお話して!」とねだったのです。「いいよ、でもママ、この先を忘れちゃったから、思い出してからね」と約束し、図書館に行って『桃太郎』の絵本を探したのですが、なんとどれひとつとしてドンブラコッコスッコッコとは流れてきません。つんぶくかんぶく、ドンブリコンブリ、つんぶらつんぶら…。でも、私の記憶では桃は絶対にドンブラコッコスッコッコと流れてきたのです!ドンブラコッコスッコッコに愛着がある私は、『桃太郎』を息子に語ることを諦めてしまいました。
つい最近アイロンがけをしながら、とうに私の背丈を抜いた息子に「桃はなんといって川を流れてきた?」と聞いてみました。「どんぶらこ、どんぶらこだよ。それが何?」とスマホをいじりながらの返事。あぁ、あのとき、つっかえつっかえでも自分の言葉で語っていれば、息子と『桃太郎』を共有できたのに…と、後悔することしきりです。
子育て中の人は、どうかためらわずに自分の声と言葉でお話を語ってあげてください。その言葉は幼い子どもの記憶に残り、楽しかった時間に一瞬で戻る魔法の呪文となるのですから。
 
 
落合さん
落合 幸世(おちあい ゆきよ)
 
白山子ども図書館ほんの森
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