暮らしのコラム 住まい
 
オーストリア共和国で2番目に小さい州、人口40万人弱のフォーアールベルグ州を「建築ツーリズム」してきました。貧しさゆえに自然環境を大切に残し、森・石・水を資源に自立した州に成長。エネルギー効率が良い建築、地域に密着した建築家・住宅会社・工務店・木材会社・部品メーカー、環境や木にお金を出す顧客がここには存在し、木造建築の先駆者の地となっています。そして家を建てたい人、学びたい職人や建築家も集まってきているそうです。
人口約3,000人のルーデッシュ村で、エコで木造建築の指導者的建築家ヘルマン・カウフマンが設計した「複合的村民センター」を見学しました。当時は神殿を造るのかと反対意見も出ましたが、全村民会議で建設が決定。今では世界中から多くの見学者が訪れ、この10年で元が取れたと案内役の当時の村長さんが話していました。住宅も2軒見学。1軒は「フォーアールベルグ木造アート・持続可能賞2017」を受賞、シンプルなデザインの中に木の心地よさが随所に感じられます。建物延面積は約300平方メートル、総工費は80万ユーロ(約1億円)。「ここでは家は資産で負債ではない」と話す施主は、地元で木工家具製作・販売を行う職人さん。これからもDIYで楽しむそうです。
日本でも省エネでエコな家づくりが増えてきましたが、思考が機械設備に偏っています。設備は10〜20年でメンテナンスができなくなり、新製品への交換を余儀なくされるため、機械設備に頼らない工夫が必要。彼らは、「ローテク」で成り立つ木造建築の世界を目指していくそうです。
 
 
筆者:鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士
 
株式会社 鈴木工務店
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URL:http://suzuki-koumuten.co.jp/