對比地 治夫さん

レストランあさお 代表取締役
全日本司厨士協会東京地方本部 副会長
對比地(ついひじ) 治夫さん

 
 
麻生区役所併設「レストランあさお」のオーナーシェフ對比地さんが、全日本司厨士協会を通じて長年にわたりさまざまな活動を行ってきた功績が認められ、2017年秋の叙勲で「旭日単光章」を受賞した。「料理人としてのプライドをかけ、多くの人に喜んでもらえるよう真面目にコツコツやってきたからかな」と對比地さんははにかむ。
 
1937(昭和12)年群馬県生まれ。高校卒業後、商社に入社するも、對比地さん曰く「若気の至り」で離職し、知り合いの紹介で銀座の一流レストランで働くことに。給料は月700円。休みは3か月に一度。銭湯の帰りに志那蕎麦を食べるのが楽しみだった。鍋洗い、賄い飯作り、先輩の下着洗濯までしないと仕事を教えてもらえなかった。当時はいわゆる徒弟制度で仕事内容がきつく、床に入ると泣いていた。しかし、努力を重ねる姿を認められ、歴史を誇る名門ホテルなどで修業の機会を得たことから、メキメキ頭角を現し、西洋料理の第一人者となっていった。
 
「レストランあさお」との出会いは、週に一度のアドバイザーを頼まれたところから。ガランとした寂しい食堂だった。その後、社長の急逝で後を受けることになり、やるからにはと、カーテンやテーブルクロス、床や椅子なども入れ替えた。「その白い帽子は何だ」「格好つけて」と初めのうちは非難されたが、メニューを全て変え、役所の食堂は「安くてまずくて汚い」というイメージを一掃。一流ホテルのような店構えと、吟味した素材選び、手の込んだ調理、美しい盛り付け料理を提供することにこだわった。役所という看板で安心して入りやすく、しかもリーズナブルなのが信望となり、舌の肥えたシルバー世代などで連日昼時は満席となる。
 
今回の叙勲は西洋料理人の世界的組織である「世界司厨士協会連盟」の加盟国である日本の、「全日本司厨士協会」からの推薦によるもの。同協会東京地方本部の副会長でもある對比地さんは、同協会のシェフたちと共に小学校や警察で料理教室を開催、老人ホームや障がい者施設に出張し利用者に料理を提供するなど、各所でのボランティア活動にも奔走。また長年にわたり後進の指導にも力を入れている。「1人でも多くの料理人を育て、社会に貢献したいと思ってやってきました。地域の人からも『みんなが応援しているから』と言葉を掛けられます。今後も努力を惜しまず一生懸命やっていきたいです」と語った。
 
 
活動の様子1
特別養護老人ホーム金井原苑で本格的フランス料理を提供。「おいしい笑顔を見られると、私たちもうれしい」
 
活動の様子2
「古典的ルールをしっかり叩き込まれたことが私のプライド」。出掛けることが難しい障がい者施設の利用者にも気兼ねなく本格的な料理を楽しんでもらえるよう、フランス料理の出張パーティーを開催(写真は川崎授産学園)。