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【住まいのいいね!】水と火と緑


 

昔は、家屋敷に掘抜き井戸が1本はありました。可喜庵にも清水が湧く井戸があり、水道が通るまでは飲料水として味わっていました。湧き水は魚が遊ぶ池を潤し、家の前の水路を通って小川に流れ込んでいましたが、15、6年前に裏山が造成され住宅地になってから変調を来し、ここで途切れてしまいました。
 端材や伐採した街路樹を燃して事務所で暖炉を楽しんでいます。揺らめく炎を眺めながら飲む酒はおいしく、残り火に放り込んだ芋の味は絶品です。先日は新築のお宅で薪ストーブの火入れ式を行いました。ストーブのおかげで部屋は心地よく、会話が弾み、雨雲立ち込める寒い一日のことなどすっかり忘れてしまいました。
 たまに「植栽はいりません」とおっしゃる人がいますが、どうして?と思うのです。風に揺れる木の枝を眺めていると、その動きと光線の関係で変化する葉の色が時間を忘れさせてくれます。この3月に開業したイスラエルとパレスチナの分離壁を見下ろすホテルは、ペイントされた壁のシニカルな風景を売りにしていますが、やはり閉鎖的です。窓の外には人を和ませる緑が必要で、家族で庭の手入れをすれば一層愛着も湧きます。
 人の心を安らかにする「水」「火」「緑」の3つのお話でしたが、このうち水や火は最近見かけなくなりました。せめて見る者の心を引き付けてやまない緑を置いてみませんか。

 

鈴木 亨(株式会社鈴木工務店 代表 一級建築士)

文 ・ 鈴木 亨(すずき とおる)
株式会社鈴木工務店 代表
一級建築士

 
 

株式会社 鈴木工務店
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TEL/042-735-5771
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