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【風のタイムトリップ vol.16】8世紀開基と伝えられる東光院と阿部原の幻の仏堂


 
 鶴川駅から徒歩15分ほどの鬱蒼とした森の中に、真言宗の寺で大日如来を本尊とする岡上山宝積寺東光院がある。確かな創建年は分からないが、寺の縁起によれば、聖武天皇の御代、行基菩薩が関東に下った折りに、鶴見川の向かいの丘に夜毎光るものがあった。その辺りを探してみると、金色に輝く観音様が見つかったので、お堂を立てて奉安したのが始まりとされている。また新編武蔵風土記稿には「開山開基は詳らかにせずといえど、天正の頃(1573〜1592年)までに十一代に及ぶ」と記されている。

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 18世紀頃の建築と言われる重層の仁王門をくぐると、広い境内には同時代建築の本堂や1718年築の位牌堂、裏(くり)、書院、鐘楼などの建造物が点在していた。手入れされた植え込みの間を縫うように石畳が張り巡らされており、庭の池やあじさいなどの草花を眺めて歩くのが楽しい。
 また同院には、1974年に市の重要歴史記念物に指定された木造兜跋毘沙門天立像(とばつびしゃもんてんりゅうぞう)が伝えられている。立像は一木造りで、鎧を着て髻(たぶさ)を結い、左手に宝塔を掲げて右手に戟(げき)を取り、地天の上に立つ。平安時代の作と考えられているが、関東では同院と南足柄の朝日観音堂だけにしか伝えられていないと聞く。

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 ところで同院の近くに阿部原(あべっぱら)と言われる標高54mほどの台地があり(現在は畑地)、ここから縄文土器、弥生土器、土師器、須恵器(「岡」と墨書されたものも)とともに古瓦が採集されている。古瓦には、寺院建物の屋根に葺いたと思われる鐙瓦(あぶみがわら)・宇瓦(のきがわら)・鬼瓦・「荏」「国」と書かれた文字瓦があり、このことから、ここに古代寺院があったと推測されている。礎石が発見されていないことと、採集瓦の中に隅切のようなものが含まれていることなどから、寺院建築としては掘立柱による小規模な仏堂—以前紹介した寺尾台八角円堂のような建築物だったのではないかとの説もある。
 帰り道、鶴見川にかかる橋に立ち、雨に煙る丘を振り返りながら、同じ時期に立ち並んでいたかもしれない二つの寺院を想った。
 
東光院 仁王門
東光院 仁王門
 
東光院 本堂
東光院 本堂
 
東光院 鐘楼
東光院 鐘楼
 
風のタイムトリップ16回地図
■東光院 麻生区岡上217

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