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【風のタイムトリップ vol.25】草木と万葉歌を味わう 金程の万葉苑


 
 金程の住宅街の中程、千代ヶ丘幼稚園の隣に位置する「金程万葉苑」。1990年に開園したここは、地域住民の憩いの場として活用すべく、多摩丘陵に自生する植物群や地域の貴重な植物、そして万葉集に詠まれた植物を中心に植栽して「万葉苑」と名付けられている。
 

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 ソメイヨシノに遅れてヤマザクラが満開を迎えた春の日、万葉苑を訪れた。起伏のある苑内には遊歩道や木の階段が張り巡らされ、その道筋からさまざまな植物が鑑賞出来るようになっている。そのうちいくつかの万葉植物には万葉歌が掲げられており、なんとも風流な佇まいだ。歌から感じ取れる当時の暮らしを想像しながら植物を眺めるのも、また楽しい散策だと思った。
 万葉苑の入り口には、アシを詠んだ夫と妻の返歌が歌碑に刻まれている。「家ろには葦火焚けども住みよけを 筑紫に到りて恋いしけもはも 橘樹郡の上丁物部真根」「草枕旅の丸寝の紐絶えば あが手と着けろこれの針持し 妻の椋椅部弟女」の二首だ。8世紀半ば頃、九州の防人の任務に就くことになった夫の旅立ちに際して「任地に行ったら、我が家の葦を燃やす火を恋しく思うだろう」と詠む夫に対し、「旅の途で袴の紐が取れてしまったら、私の手と思って針で縫いつけてください」と思いやる妻の心情が切々と伝わってくる。案内板によれば、橘樹郡に属する高津区では近年まで葦を焼いて燃料にしていた歴史があることから、夫婦の家は野川や子母口辺りではないかと推定され、川崎市の代表的な万葉歌としてここに刻んだとされている。

 
万葉苑の遊歩道
万葉苑の中の歩きやすい遊歩道
 
万葉歌碑
万葉苑の入り口の川崎に因む万葉歌碑
 
25回地図

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